韓国のサムゲタン屋の人参酒、実は違法かもしれない

韓国の伝統的な夏バテ防止料理であるサムゲタン、自家製の人参酒、そして日本の自家製梅酒が、法律や規制を象徴する天秤や書類とともに並ぶ、伝統と法律の境界線を表現したイラスト。


「味見に人参酒を一杯どうぞ、サービスです」。初伏の翌日にあたる先月16日、ソウル江南のサムゲタン専門店でこう言われ、食前酒として人参酒が出てきました。壁には店主が自分で漬けたという人参酒が10本ほど並び、瓶の中にはそれぞれ人参が入っていました。ラベルも何もない手作りの瓶が並ぶ様子は、いかにも老舗の食堂らしい味わい深い光景でした。

サムゲタン店でこうした食前の人参酒はよく見かける光景です。人参酒が鶏肉のくどさを和らげ、血行を促して滋養効果を高めてくれるとされているためです。市販の人参酒を出す店もありますが、自家製の人参酒を提供する店も少なくありません。韓国では暑さの厳しい夏場、体力を補うために鶏肉と薬草を煮込んだサムゲタンを食べる習慣が根強く、そこに添えられる一杯の薬酒は、いわば食文化の一部として長く親しまれてきました。


そもそも三伏とは何か

記事に出てくる初伏や中伏という言葉は、日本の読者にはあまりなじみがないかもしれません。韓国には旧暦に基づいて夏の暑さが最も厳しいとされる三つの日、初伏、中伏、末伏をまとめて三伏と呼ぶ風習があります。それぞれ十日前後の間隔で巡ってきて、この三伏の日にはサムゲタンや犬肉スープなど滋養のある熱い料理を食べて暑気払いをするのが伝統です。暑い日にあえて熱い料理を食べることで体力を補うという、韓国独自の夏の過ごし方と言えます。今回の記事も、まさにその中伏を目前に控えたタイミングで書かれたものです。


実はこれ、違法かもしれません

ところが、こうした自家製の人参酒が「違法」の境界線上にあるという法曹関係者の指摘があります。まず、酒類製造免許を持たない飲食店は、自分で漬けた酒を販売することができません。韓国の租税犯処罰法によると、酒類の免許を受けずに酒を製造または販売した場合、3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金に処されます。個人が自分で飲むために酒を漬けることだけが例外として認められています。

酒を製造しようとする場合、酒税法上、必ず管轄の税務署長から製造免許を取得しなければなりません。人参酒のような漬け込み酒は酒税法上、一般蒸留酒に該当し、一般蒸留酒の免許を取得する必要があります。免許の取得には一定の設備要件や審査が伴うため、個人経営の小さな食堂が気軽に取得できるものではないのが実情です。たとえ製造免許を持っていたとしても、一般飲食店として届け出ているサムゲタン店では、自分で製造した酒を営業に使うことはできません。一般飲食店では市販の酒類しか提供できないためです。つまり、たとえ無償でお客に振る舞う「サービス」であっても、営業の一環として自家製の酒を出す以上、この規制の対象から逃れることは難しいというわけです。


店主たちも知らなかった

長年サムゲタン店を営んできた店主たちは、こうした規制について「知らなかった」と口をそろえます。25年間サムゲタン専門店を経営してきたAさんは「酒類販売業として登録されているから問題ないと思っていた」「自家製のサービス用人参酒のために別途免許が必要だとは知らなかった」と話しました。「25年間ずっと客にこの漬け込み酒を出してきたが、これまで何も問題はなかった」とも付け加えました。


43年間営業を続けているサムゲタン専門店の店主Bさんも「人参酒を提供する際に必要な手続きがあるという話は聞いたことがなかった」と語っています。長年にわたり誰にも指摘されず、当たり前のように続けてきた慣習が、実は法律上グレーというより明確に違法な領域に踏み込んでいたという事実は、多くの店主にとって驚きだったようです。何十年も家業として店を続けてきたベテラン経営者であっても知らなかったという点は、この規制がいかに一般には浸透していないかを物語っています。


韓国外食業中央会のキム・スンイル相生協力チーム長は「一般の事業者は酒類販売の届け出をしているため、漬け込み酒までその範囲に含まれると広く解釈しているケースが多いようだ」とした上で、「販売と製造はまったく別の話だ」と説明しました。さらに「酒は税収の手段として敏感に扱われるため、取り締まりに入れば該当する店はすべて法律違反の対象になるだろう」「人参酒の作り方自体は簡単に見えるが、免許を取って製造・販売することとは大きな違いがある」と付け加えています。酒税が国の重要な財源の一つである以上、無免許での製造や販売には行政側も神経質にならざるを得ないという背景があるようです。実際にこれまで大規模な取り締まりが行われてきたわけではないようですが、法律上は明確に違反状態にある店が数多く存在している可能性が高く、いつ摘発の対象になってもおかしくない状況だと言えそうです。


日本ならどうなるか

この話、実は日本の読者にとっても他人事ではありません。日本の酒税法はむしろ韓国より厳格です。酒税法上、アルコール分1パーセント以上の飲料を製造するには税務署長の免許が必要で、個人が自分で飲むためだけに漬けた場合であっても、原則として無免許製造の罪に問われます。罰則も10年以下の懲役または100万円以下の罰金と、韓国の3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金よりも重く設定されています。つまり韓国では個人が自宅で飲む分には例外として認められているのに対し、日本ではその自家消費すら原則として違法という、より厳しい建て付けになっているわけです。

例外的に許されるケースもあります

とはいえ日本にも例外はあります。1962年の酒税法改正で、梅酒のようにすでに完成しているアルコール度数20度以上の酒に果実や砂糖を漬け込む場合に限り、特別に酒造免許が不要とされました。長年各家庭で梅酒作りが親しまれてきた歴史を踏まえた措置です。ただし条件があります。あくまで自分や家族が飲むための自家消費が前提で、販売したり、営業として不特定多数の客に提供したりすることは認められていません。ここが今回のサムゲタン店の事例と重なる部分です。飲食店が自家製の梅酒や果実酒を「サービスです」と客に出せば、それがたとえ無料であっても、営業行為の一環とみなされ、この例外規定の対象外になる可能性が高いのです。日本の居酒屋や飲食店でも、店主が漬けた自家製の梅酒がサービスとして出てくることは珍しくありませんが、同じ理屈が当てはまる可能性があると考えると、決して対岸の火事とは言えません。


中伏を控えて考えたいこと

今回の取材のきっかけとなった記事は、25日の中伏を前に書かれたものです。韓国では夏の三伏の日にサムゲタンを食べる習慣があり、その席で振る舞われる一杯の人参酒にまで、実はこれほど複雑な法律が関わっているというのは、なんとも興味深い話です。おもてなしの心から出された一杯が、思わぬ形で法律の網に触れてしまう。長年当たり前のように行われてきた慣習だからこそ、店主自身も気づきにくいという構造も見えてきます。韓国と日本、どちらの飲食店にとっても、善意のサービスが規制の境界線上にあるという現実は、知っておいて損はなさそうです。次にサムゲタン店やお気に入りの居酒屋で自家製の一杯を勧められたときは、この話をふと思い出してみるのも面白いかもしれません。おもてなしとして出される一杯の裏に、両国それぞれの酒税法という制度が静かに横たわっているのです。

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